なぜ不動産投資で「価格交渉」が重要なのか
価格交渉でもっとも重要な事が2つあります。
メリット・デメリットにつていては、この先で説明していきます。
価格交渉とは?
これが、価格交渉の定義となります。
そして、価格交渉において覚えて頂く言葉が2つあります。
「指値」と「買い上がり」です。
- 株式や商品の売買にあたって、顧客が指定する値段を「指値」と言います
不動産の売買においては、買主が指定する物件の希望購入価格のことを指す - 指値は売出価格より低い価格で提示することが一般的ですが、割安の物件で競争が激化した場合、売出価格より高い価格で購入の意思表示をする事もある=「買い上がり」
例えば、1億円で不動産が売りに出されていたとします。
売値よりも安い、8千万円での購入を伝える事が「指値」となります。
逆に、売出価格よりも不動産の価値が高く、1億円よりも高い値段を付けなければ購入できない場合があります。
その場合、売出価格1億円に対し、1億2千万円での購入意思を伝える事が「買い上がり」となります。
価格交渉をする4つのメリット
- 安く不動産を購入する事が出来ます
- 利益率(利回り)を上げる事が出来ます
修繕にお金がかけられる・入居募集の際に賃料交渉に応じることが容易になります - 出口戦略が有利になります
物件売却時の利益アップ - 金融機関との交渉時に有利になる
購入時はもちろん、次の物件購入時の融資審査に有利
何も言わなければ、行動しなければ、売値のままです。
価格交渉しなければ、不動産は絶対に安くなることはありません。
価格交渉を行い価格が下がれば、利回りが上がりますので、今後賃貸運営していく際に発生する家賃交渉や、賃料の値下げに対応する体力が付いた状態で運営して行くことができます。
利回りが上がることで、金融機関からの融資も受けやすくなります。
また、金融機関からの融資金額も抑えられ、購入した不動産の収益率も上がれば、次の不動産購入時の金融機関審査が有利にな状態にもなり、不動産を買い進めるプラス要素になります。
メリットがあれば、当然デメリットもあります。
次は、デメリットについて説明します。
価格交渉をする4つのデメリット
- その都度売主に確認するため交渉に時間がかかります人気物件の場合
- 人気物件の場合は、買い上がられる可能性があります
- 安く売ることになるため、売主の売却意欲の低下がおこります
- 仲介手数料が減るため、不動産仲介業者のモチベーション低下に繋がります
売出し価格よりも安い価格での購入となりますので、売主へ不動産業者が価格を伝えて、売主は値下げを了承するか判断する事になります。
そのため、売出し価格で購入する場合よりも処理するステップが増えますので、それだけ時間が掛かります。
むやみな指値は避ける!!
価格交渉が可能な物件か見極める
自分の目で物件を見る
- 立地環境 (駅、公園、コンビ二などの商業施設の有無・日当たり等)
- 市場性 (近隣の市町村との比較)
- 建物の状態 (修繕が必要か否か)
ファミリー向けの不動産に多いのが、道路1本を堺に学区が違い場合があり、道路1本が不動産の価値を分ける事があります。
道路1本を堺に家賃が数千円違ってくる事もあります。
地元の客付け業者にヒアリングする事も有益な情報を得られます。
実際に物件を調査し、複数の情報を得ることで、値下げの交渉材料にします。
不動産を実際に見て得られた情報であれば、不動産業者に対しても説得力のある交渉が行えます。
実際に確認することで得られる収支を予測し、交渉材料に織り込む事が重要!!
他人任せに絶対にしない事が重要!!
2つの方法で物件の価値を算出する
積算価格 (土地と建物の価値を足したもの)
<土地> 路線価 × 土地面積
<建物> 建物構造別再調達価格 × 延べ床面積(平米) × (耐用年数-築年数) ÷ 耐用年数
該当の不動産がある時点で再調達されることを想定した場合に必要とされる適正な原価の総額。
建築資材の価格が違うため、構造によって目安価格が変わる。
再調達価格の目安:
・木造12.5万円
・軽量鉄骨12万円
・鉄骨造17万円
・RC造20万円
機械、設備、建物など減価償却資産が法定上の使用可能な見積期間のこと。
税法で分類耐用年数を定めており、その耐用年数に従って減価償却をする。
法定耐用年数:
・木造22年
・軽量鉄骨造19年
・鉄骨造34年
・RC造47年
積算評価については、「3分で出来る!不動産投資の積算評価」で分かりやすく説明しています。
積算価格での物件価値算出例
・一棟RCマンション(法定耐用年数47年)
・1996年築(築17年)
・土地面積600平米 延べ床面積800平米
・路線価30万円/平米 建物構造別再調達価格20万円
計算式:土地の価値 = 路線価 × 土地面積
・30万/平米(路線価)× 600平米(土地面積)= 1億8,000万円(土地の価値)
②建物の価値
計算式:建物の価値 = 再調達価格 × 床面積(平米) × (耐用年数-築年数) ÷ 耐用年数
・RC:20万円(再調達価格)× 800平米 × (47年(耐用年数)- 17年(地区年数)) ÷ 47年(耐用年数) = 1億212万円(建物の価値)
物件Aの積算価格 = ①土地の価値 + ②建物の価値 = 2億8,212万円
収益価格(収益性)
半永久的に不動産を保有し続けたと想定し、その不動産から生み出される単年度の収益(賃料)に着目して不動産の価格を導き出す手法です。
一般的な収益性を算出する際に使用されます。
計算式:収益価格 = NOI(年間純収益) ÷ 実質利回り
不動産を投資対象と考え、保有中の一定期間のトータルな収益と最終的な売却による収益までを検討した手法です。
金融機関が収益性を算出する際に使用する事が多いです。
投資する不動産の年間賃料収入から賃貸管理委託手数料と、固定資産税、都市計画税など、あらかじめほぼ確定している年間支出を差し引いた年間粗利を、物件価格で割って求めます。
表面利回りよりも現実的な数字になります。
計算式:実質利回り(%) = (年間賃貸収入-年間諸経費) ÷ (物件購入価格+購入時の諸経費) × 100
収益価格での物件価値算出例
・一棟RCマンション(法定耐用年数47年)
・1996年築(築17年)
・年間賃料収入 3,000万円
・年間経費 600万円(維持管理費・修繕費・公租公課・損害保険料等)
・空室等損失相当額 600万円(年間賃料の20%)
・土地面積600平米 延べ床面積800平米
・路線価30万円/平米 建築単価20万円
年間純収益 = 間賃料収入 3,000万円 - (年間経費 600万円+空室等損失相当額 600万円)
返済金利:6パーセント
返済年数:30年
毎月返済額:150万円
毎月返済額 = 年間純収益 1,800万円 ÷ 12ヶ月
不動産業者から「ぶっちゃけ話」を引き出す
売主は信頼のおける不動産業者に販売を委託するケースが大半です。
売主との関係が深い業者ほど、ホットな情報を持っている可能性が高いです!!
それでは、そのような不動産業者からどのようにして情報を聞き出すか・・・。
仕事から少し離れた場所に誘う
最初は「喫茶店」で「世間話程度」をします。
続いて「ランチ」 or 「夕食」に誘って、売主の「売却理由」等を聞いてみましょう。
打ち解けてきたら、「居酒屋」 or 「ラウンジ等」で深い話をして「指値の根拠になるネタ」を引き出してみましょう。
そうすることで、本音(ぶっちゃけ話)を聞き出せる可能性が高くなります!!
謝礼を渡す
・不動産業者が自営の場合や税理士、弁護士が絡んでいる場合も有効ですが、金額が高額になる場合が多いです。(俗に言う印鑑代…)
・謝礼の目安は、3万円〜5万円程度となります。(封筒に入れて)
謝礼を渡すタイミングですが、不動産の引き渡しタイミングで渡すのがベストです。
- 案件が成約に結び付いたら・・
- 条件が更に有利になった場合は・・
価格交渉に必要な隠れたポイント
不動産取引の罠に注意
不動産業者の評判、悪徳弁護士、税理士は絡んでいないか注意してください。
特に、不良債権の場合はどのような債権者が絡んでいるか、お金の流れに注意してください。
シロアリ・雨漏り・給排水の水漏れ・躯体の損傷などに注意してください。
レントロールと現在の賃料相場を調査
最低3社の客付け業者からヒアリング
・3社程度ヒアリングすることで、おおよその相場観を把握することができます。
・TELで聞くのもよ良いですが、実際に訪問すしヒアリングしてみる事をオススメします。
ヒアリングのポイント
・新築の賃料相場は?
・既存の賃料相場は?
・即決賃料相場は?
など、数字で具体的ヒアリングする事で、調査に役立ちます。
レントロールの内容とヒアリングした相場を比較する
間取りの需要と供給の確認
・20年くらい前の間取りは、今のニーズに合っていないケースが多いため、慎重に検討する必要があります。
将来的にニーズに合わせた間取りに変更する予算が必要になる可能性大です。
たとえば、
- 1K・1ルームの3点式ユニットをセパレートタイプに変更する
- ファミリータイプのオール和室仕様を洋室に変更など・・・。
建物の外観及び室内を調査
・塗装の劣化状況


・サッシまわりのシーリングの劣化状況

・クラックの状況

・防水・ルーフィングの状況

・損傷・汚れの状況・設備機器の状況


周辺の取引事例を調査する
土地の実勢価格
机上の数値(Webなど)と実際の数値の差を確認しましょう。
収益案件の取引実績
判断材料として収集しましょう。
価格交渉に使用する6つのテクニック
積算価格=原価法を提示する
不動産の物件価格を現在の価値で評価したものです。
建物の価値は経過年数に応じ、原価修正して算出されます。
・収益還元法より低い評価額になる傾向があります。
・具体的な算出方法は、「3分で出来る!不動産投資の積算評価」で分かりやすく説明しています。
収益価格=収益還元法を提示する
その不動産が将来的に生み出す賃料収入に注目し、物件価格を評価したものです。
・積算評価より高い評価が出やすいのが特徴です。
取引事例比較法を使う
比準価額を指しています。
・近隣不動産の過去の成約事例(取引価格)を基に、不動産価格を算出する評価方法です。
不動鑑定評価のひとつ。
・主にエンドユーザー向け住宅の売買において活用されます。
・ただし売り急ぎや買い急ぎなど、例外的な取引が発生した時の特別な事情を考慮(排除)します。※近隣で比較対象事例がある場合に有効です。
修繕費用の見積もりを利用する
建物外装の大規模修繕はかなりの費用が掛かります。
したがって、どのタイミングで行うか資金計画が重要となります。
・1994年築 RC4階建て ルーフィング葺
・延べ床面積 809平米
・外壁仕様 全面塗装(既存タイル部なし)
・外装リフォーム見積もり金額 :577万円(税込)
人気物件でスピードが要求される場合には、単純にリフォーム業者に見積りをとっていたら機会損失が生じてしまいます。
そこで、費用の見積りが即時に算出できる計算式を伝授します。
例えば、
延べ床面積800平米の場合は、「800万円 × 0.8万円〜1万円」で計算します。
その場合、640〜800万を外壁修繕費用の目安とします。
※建物の傷み具合 仕様により前後します。
自分自身の購入予算を提示する
自己資金+調達資金(銀行融資や援助資金など)
・不動産業者も「買える客」とみなし優先順位が高くなります。
・その予算で売主側の説得力パワーが増大します。
感情に訴える
売主も人の子です。
物件に思い入れがあるはずです。
気持ちを汲んで取引に挑めば良い流れになる可能性が高くなります。
「物件に一目ぼれした・・」
「取得した際には永年大切に・・」など
売主・不動産仲介業者を尊重しましょう。
決して、横柄な態度しないようにしてください。
価格交渉に有効な4つのタイミング
現地調査時
「まずは物件を見る」で説明した情報を収集し、交渉に挑みましょう。
・市場性(近隣の市町村との比較)
・建物の状態(修繕が必要か否か)
また、すばやい買付が可能となります。
条件とは?
・築年数が比較的新しい(RCの場合は築10年以内、木造・鉄骨造の場合は5年以内が目安)物件で、収益評価・積算評価が出ること
建物調査時
実際に外装・内装を確認し修繕費用を試算します。
そして、価格から修繕費用を引いて指値を提示します。
需給調査時
客付け業者(アパマン、ミニミニ、エイブル等)から得た賃料相場の情報をもって、価格交渉に挑みましょう。
協力が得られれば、査定書を作成してもらうと良いでしょう。
査定書は大半の場合、無料で作成してもらえます。
購入に至った場合、管理及び賃貸募集を依頼したい旨を含ませると良い手土産を持参すると好印象となります。
既存の家賃 (レントロール参照) を相場の家賃に引き直して交渉しましょう。感触良ければ買付!
その際には、一切この話に触れてはいけません!!
融資内諾時
銀行からの資金調達の金額が確定すると、購入予算が確定します。
ゆえに、売主もその金額を基準に回答するしかなくなります。
無い袖振れません。
価格交渉を成功させる4つの秘訣
売主の立場になってみる
売主側事情は様々です。
・任意売却
・賃貸経営が煩わしい
・相続発生
・利益確定による売却
などなど。
不動産仲介業者の立場になってみる
不動産仲介業者の胸の内を考えてみます。
・予算の達成・・
・新規案件の紹介
・成功報酬
などなど。
たとえば、
・融資の内諾を提示して、買える属性で有ることを示し安心感を与えます (銀行が作成してくれる提案書があると良い)
・キャッシュがあるのであれば、融資特約なしの買付可能な事を伝えましょう (融資がおりなければ現金買いする覚悟と資産が必要)
・身内からの出資により買付けできる事を証明しましょう
理論的かつ感情溢れる買主になる
少しでもお値打ちに買いたい、それには。
・豊富なキャッシュフロー
・売却益
・融資の獲得
などなど。
心を揺さぶる買付証明書を書く
買付証明書は、売主へダイレクトに届く唯一のアイテムです。
今回の購入に至った経緯と、指値の根拠、そして、購入後の流れを書き添えてみましょう。
価格交渉を成功させるには!?
基本に忠実に!人間力が成否を分ける!
日頃の関係構築に益々力を入れ、不動産業者や金融機関に存在感を与え、信頼を獲得し得る存
在になることで、いざという時の価格交渉も成功させることが出来ます。
「この物件はあの人に紹介しよう」そう思われる存在になる事が大切です。
不動産購入の価格交渉について最後に
- 物件購入時には自分の足で調査を行い、価格交渉のポイントを突きましょう。
- 迅速に行動し、早期契約により物件を確保しましょう。
- 指値が通って売り渡し承諾書をもらっても油断は禁物です。
良い案件は蒸発するように去っていきます。
したがって、スピードが非常に重要となります。
理論付けしたプレゼンテーションができるよう、情報収集とスキルアップに努めることが大切です。
コミュニケーション能力を磨き、チームで活動できるネットワークを構築しましょう。